プライムビーピーは、実務からアプローチする業務改善、システム開発を実践するソリューションプロバイダーです。

建設実務の視点

Aspect of construction businnes

PrimeBP

3.ファイナンススキームの多様化が建設産業に変化をもたらす

 建設に関連したファイナンススキームが多様化している。金融システム改革 と言われた国際化・自由化(金融ビックバン)の結果様々な金融商品の登場や 市場型の間接金融の増加が建設へ波及してきているからだ。建設はもともとファ イナンス機能を持った事業と言われてきた。しかしながら商社が商品の流通過 程で発生する与信や決済を商社金融と称し明示的にビジネス機能として位置付 けてきたのに比べて、建設ではあまり目立たぬ存在であった。建設会社は一般 に前途金、中間金、竣工金の3段階で発注者から工事代金の支払を受ける。 その間自己資金を用いて毎月の出来高、納品等に応じて協力会社への支払を行う。 このキャッシュフローの差が建設会社におけるファイナンス機能の原型だ。

 これまでも建設業では個別の事業にのみ使途を限定し、当該事業からの収益 により資金回収を行うプロジェクトファイナンスや、造注のための付加サービ スとしての建設資金の立替や債務保証等が行われてきた。また高度な事例として B・O・T(ビルド・オペレーション・トランスファー)方式による事業運営を 通じて建設資金を回収するスキームにも実績がある。最近ではPFI(プライ ベートファイナンスイニシアティブ)が一般化し、公共性の高い事業の建設及 び運営方式として定着しつつある。こうした資金スキームは、建設事業におけ るファイナンスに請負者である建設会社が主体的に関わるものだ。

 2000年のSPC法の制定と投信法の改正で不動産投信(REIT)のため の制度が整備されたことにより、不動産の証券化も大いに進んでいる。土地再開 発事業では今やSPC設立が当たり前だ。新築マンション建設の事業スキームと して証券化を導入するケースもでてきた。変り種では家賃補償をファンド化した 共済制度もあると聞く。

 一方、建設の事業ファイナンスに加えて、先にファイナンス機能の原型と呼ん だ工事を請け負った以後の建設ファイナンスでもここへきて様々な取組みが進み つつある。支払手形の発行を廃止し、ファクタリングを導入する例は珍しくない。 手形の代わりに期日指定(例えば90日後など)の現金支払を約す支払形態もある。 更に進んで大手ハウスメーカーでは、金融機関と共同でインターネットを用いた 決済システムを導入し、協力会社が期日指定日前に支払金額を手形のように割り 引いて現金化できる仕組みを導入している。また別のハウスメーカーでは個人の 施主向けに出来高払いのローンを損害保険会社と共同開発した。施主は住宅建築 のつなぎ資金が不要となり、工事進捗に応じた融資を受け、そのまま工務店等へ 支払われる。出来高払いの効果については国土交通省も研究課題としていると言う。

 こうした様々な建設事業に関わるファイナンススキームの多様化は建設経営に も建設産業にも多くの変革をもたらすだろう。元々建設事業は多額の資金を必要 とし、事業主の資金力と共に、請負企業である建設会社の信用力と隠れたファイ ナンス力に支えられてきた。そうしたファイナンス機能が請負契約(ゼネラルコ ントラクト)に暗に含まれることなく切り離され、明確に建設サービスとして位 置付けられる意味合いは大きい。サービスならその質が競われるからだ。それは 顧客ニーズと相まって事業内容に適したメニューの開発や間接金融としての流通 市場の創造へと発展していく可能性を秘める。更に公共事業自体においてもプロ ジェクトファイナンスの導入、民間ファンドの設立や資産証券化など資金スキーム を多様化させていくであろう。

 工事毎にファイナンススキームが組み込まれれば、会社としての資金管理の考 え方は大きく変わる。例えば元請建設会社による支払保証と協力会社のファクタ リングの組み合わせは工事施工途中における元請建設会社の工事資金を不要にする。 資金決済の仕組みが変われば建設会社に毎月訪れる作業負荷の大きな定時支払業 務はなくなるかもしれない。建設会社のビジネスプロセスは大きく変わるだろう。 金融の多様化は上場企業だけではない多くの建設会社に対する様々な評価の必要 性を高め、技術力や施工品質、経営面での取組みが反映される企業格付が発展す る可能性を生む。また単に一企業の財務面や経営面での評価だけではなく、請け 負った工事の発注者やその事業性により工事毎の資金コストが変わるような仕組 みも実現性はある筈だ。市場の中で正当に評価され明示される基準が生まれる効 果は大きい。公共工事では下請セフティーネット等の一部の例外を除いて認めら れてはいないが、工事債権の流動化や譲渡債権を認めることも、新たな建設ファ イナンスの可能性を開くことにもなろう。

 こうした建設ファイナンスへの取組みは、業界全体として行っていく大きな 課題と共に、先の事例のように個々の建設会社の経営努力により実現可能なテーマ も多い。いずれこの隠れがちな機能が新しい建設のビジネスモデルの創造に不可欠な 要件となるものと考えている。


2003年6月4日(水) 掲載
日刊建設工業新聞コラム「所論/諸論」より(1年間連載したものに一部加筆訂正)


[戻る]

Copyright (C) PrimeBP All rights reserved