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建設実務の視点

Aspect of construction businnes

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4.営業改革への視点 -請負体質からの脱皮-

 どの産業にもその産業を性格付けている共通の文化、体質というものがある。 そしてどの会社のどの部署でもその体質が少なからず感じ取れるものだが、 特に色濃くその産業体質を体現した業務が営業と言えるだろう。その上営業 は商売の原点だ。故に、制度疲労や経営環境の変化に直面した多くの会社で 営業改革は欠くことのできない重要な経営革新のターゲットとなる。目に見 える体質改善の象徴となるからか。商品、制度、システム、マインド様々な 角度から改革の一刺しを起案する。

 建設産業ではよく指摘される請負体質がそれだ。その思考回路に組み込ま れたロジックは建設営業の行動原理に特徴的だ。チャレンジを始めた建設会 社のネックが意識改革のできない営業部門となることも多いと聞く。経営者 が、すっかり入れ替えてしまった会社もあると言う。

 これまで建設会社の営業がお世辞にも花形部門となったことはなかった。 公共工事は寄り合いで、民間工事はトップ営業が原則だ。バブル経済に突入 する前、しばらく建設は冬の時代を過ごし、建設各社は「全社営業」「造注」 を御旗に、営業を全面に押し出す。民間営業が大世帯となった。今でこそ マンション建築は当たり前だが、昔は老舗のゼンコンの肴ではなかった。 それが今ではデベロッパーも自前でこなす。時代のニーズも事業スキームも 変わってきている。けだし、請負体質は変わらない。デベロッパー事業も工 事を請け負うための視点ばかりで、事業を見渡す目利きが不足している。形 ばかりの事業収支が積み上げられた。比して工事の実行予算は適切だ。販売 用不動産は資産勘定に鎮座している。

 建設会社には隠れた負の遺産も多い。勇んで取り組んだ住宅フランチャイズ の権利金に、使わぬ技術パテント、企画マンションの商品開発コスト。市場 を読み間違えたか、目的を迷ったか。ここにも請負体質が顔を出す。セールス は古今東西工夫の賜物、リトライと反省を糧に実績を作っていくもの。こっち では営業が鎮座ましている。

 自社のシェアは幾ばくか。つまりは負けているのだ。それを捨て、あれを捨て、 では行く先は危うい。何も新技術、新企画に頼らずともネタはある。顧客ニーズ とは言葉ばかりでなく、商品やサービスの中に自然に加えていくことはできないか。 発注者や事業者の先に、本当のニーズがある。そこに利用者がいる。自らサービス 事業の主となった建設会社の設計部門が育った。社員総出で事業運営に参加して いる。その事業を通じて施設のメンテナンスや利便性を自ら体現し、様々な設計に 反映しているからだ。施設利用を踏まえた設計の重要性を痛感したと言う。地域 や顧客との永い付き合いが地場産業の信条、建設の原点には地域のニーズを汲み 取る力があった筈。ひと肌もふた肌も脱いでいた時代はいずこ。

 業態転換も選択枝ではあるが、延長戦上にも実りはある。そのためには収穫へ の働きかけが必要だ。待つ営業から創りだす営業へ、それは請負体質からの自己 改革でなければ得られない。物件を探し、顧客を探し徘徊する営業から、地域を 知って、ニーズを知った営業へ。市場を掘り起こそう。役所へ提案して廻る会社 もある。ニーズや課題のあるところに場違いなどない。

 組織営業、システム営業の御旗は掲げられてからどれだけ経過しただろうか。 大事なのは情報の共有。餌場を一人で抱えているのが一匹狼。ネアンデルタール人 が絶滅し、体も力も劣るクロマニオン人が生存競争に勝ち得た理由は言葉にあった。 クロマニオン人は餌場を言葉で記憶し共有できた。ある地方ゼネコンのトップは、 引き合い情報の開示に力を振るった。事前に引き合い情報が報告されていない案件 を受注しても営業担当者の成果とはしない。新規顧客への対応は複数であたる。 風通しが格段に違った。

 営業改革は、正に戦のフロントライン、経営トップが先陣切るのが慣わし。 人任せ、批評家側に立っては、事は進まない。社員は観ている、感じている。新たな 企業風土、文化形成の時、旧弊を捨てたトップも多いと聞く、本丸と定めたか。 もう右肩上がりでないことは誰でも知っている。順番を待っている時ではない。市場 は同じものには優劣をつけまい。大事なのは自社の言葉で、自社の腕で形創ること。 でなければ長続きしない。人真似も場所を変えれば時間稼ぎぐらいにはなるか。志の あり様は違う筈だ。

 足で稼ぐことも必要かもしれない。しかし聞くのは顧客の声、世間の声、時代の声。 声のするところに姿は見えるもの。


2003年7月31日(木) 掲載
日刊建設工業新聞コラム「所論/諸論」より(1年間連載したものに一部加筆訂正)


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