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建設実務の視点

Aspect of construction businnes

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6.企業会計のレベルアップと経営強化

 「経理財務業務マップ」をご存知だろうか。経済産業省が今年の3月に発表 した「企業の経理財務部門で行われている業務の全体像を記述した」職務体系 である。「業務マップ」は、BPR(業務の設計)や人材育成、そして職能評 価等に活用することを狙いとし、体系的網羅的に経理財務業務を取り纏めてい る。作成の背景として、経理部門が従来の会計情報を作成することから、会計 情報を分析し、経営への提案機能を高めることへとその役割が変化してきてい ることを挙げている。「戦略的な経理財務部門の育成が円滑な事業活動を展開 する上でも重要であると再認識されている」ことが基本にある。

 企業会計は人の神経のように営業活動で発生した様々な経済取引を知覚(記述) するものと言える。神経が多岐に張り巡らされ様々な行動を支えているように、 企業会計もより企業活動の全体像を捉えていく方向にある。国際会計基準に沿っ た実質支配に基づく連結決算や、税効果、減損会計等々の制度会計における厳 格な計算と開示への要求もその本質には企業が知覚すべき事象を拡張し、企業 会計がジェネリック(集合として)に企業を捉えることを可能にしようとする ものだ。よって会計情報の網羅性や視認性は高まり、経営への提案力が向上する。

 また会計の役割は、公共団体や公団等への企業財務の導入という面でも進み つつある。従来の収入と支出だけで捉える公共系の組織・法人の公共会計から 民間企業同様の財務諸表を作成することで、財政並びに損益を計算し経済性を 評価しようとする試みだ。公共サービスや事業の結果を効率性や収益性といっ た面からパフォーマンス(成果)として捉える必要性が根本にある。

 このように会計が非常にクローズアップされている時代ではないだろうか。 経済社会の中で会計の持つ社会的な存在意義が大きくなっているからだ。

 一方で一般に会計への理解が不足しているのも事実である。未だ多くの会社 で会計の役割は計算の域を出ない。特に建設業はもともと技術主導型の産業の ため財務会計が軽んじられてきた面がある。「たかが経理」と言う経営者も少 なくない。当然ながら経営者の愛情の足りない経理部門が育つわけがない。 そこには集計、計算事務以上の期待がないからだ。それどころか化粧を施され た経理数値で社内の経営報告がなされている会社も多い。担当者が代々伝承さ れた化粧の訳も知らずにいたという笑えない話さえあるほどだ。いわんや経営 者が自社の会計数値を正確に理解できているはずがない。

 経験と勘が羅針盤の経営に唯一制度化され、共通のそして定量的な情報を提 供できるのは会計しかない。また会計というのは様々な企業活動を記録するも のであり、会計情報として多くの付帯情報を把握、蓄積することも可能だ。 またそうした実績情報は様々な傾向や示唆を与えてくれる。目標として掲げら れることの多い「先行管理の実現」とは、実はそうした実績の積み重ねの上に 成り立つ。一足飛びに先々の予測などできない。

 国際化の波は国際会計の導入に相俟って今後益々新たな会計面でのテーマを 投げかけてこよう。当初工事進行基準の導入に抵抗していた建設業界は、減損 会計の強制適用に際して収益嵩上げの手段とみると積極的に採用した。そして 四半期決算の開示を迎え、工事進行基準の適切な運用が課題となった。また反 旗が掲げられるのだろう。国土交通省が決定した共同企業体の独立会計方式導 入への業界対応も同様に、本質を外れた小手先のその場凌ぎを示し合わせる。 しかし銃後には連結会計の視点から持分会計がテーマとして待っている。消極 的な後手の対応はいずれそのフロントラインを突破されてしまうのが世の常。 世にJV会計への不信の目があることを忘れてはいけない。横並びで契りを結ん で良しとする業界体質は、右肩上がりでなくなった時代には綻びだすだろう。 本来なら大手企業としての矜持と先導役の徳を期待されるところ。率先して新 しい企業経営に相応しい会計を研究、実務導入することで中小、地方ゼネコン の範となることを。

 国際会計への対応は上場建設会社だけではなくやがて中堅中小へも浸透して いく。そこにある大きな成果はグローバルスタンダードの導入自体ではなく、 国際会計の求める役割を担える企業会計のレベルアップとその結果としての経 営の強化にある。それはまた経理財務担当者の企業経営における存在意義の向 上でもある。

 時代に相応しい経理部門を創り上げることを経営目標とする建設会社は何社 あるだろうか?


2003年9月8日(月) 掲載
日刊建設工業新聞コラム「所論/諸論」より(1年間連載したものに一部加筆訂正)


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