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建設実務の視点

Aspect of construction businnes

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7.[リストラの人材への影響]”老害”より深刻な”若害”組織に居続ける”人罪”

 1997年をピークに建設産業就業者の減少が続いている。バブル崩壊以 降建設産業の低迷が続いていたにも関わらず建設就業者は増加傾向にあった。 今年4月の調査では591万人とほぼ1990年と同等の規模となっている。 この間建設業界では大手を始め地方においても多くの建設会社がリストラに 取り組み社員を減らし続けている。厚生労働省の労働経済調査においても常 雇労働者の過剰感は建設産業がトップであり、未だ高いDI(指標)を示し ている。

 一方、一部の大手建設会社を除き業績回復の兆しは見えず、多くの建設会 社にとってリストラの痛みが癒えぬ内に更なる努力を強いられている状況に あるのではないだろうか。持久戦の様相も予想される中、リストラによる様々 な弊害も生じている。人員削減で計算上のコスト圧縮はできたが、その見返 りは思いのほか将来に対して大きい。

 建設産業は以前から人の産業と言われてきた。労働集約型産業ゆえに機械 化や自動化の範囲が限られ、どうしても人の経験とノウハウに依存する部分 は大きい。つまりばっさり切った後には何も残っていなかったという話にな る。これは営業や管理も含め全ての仕事に同じ。手帳も名簿も個人の所有物 と気付くやいなや会社の組織制度やシステムの重要性を思い知ることになる。 慌てたSFA(営業支援システム)導入の動機がここにあった例は多い。 ノウハウの伝承と言われる社内徒弟制はどこの建設会社でも見られるが、実は こうした状況へのセーフティネットにもなっていた。ところが仕事が減ること で人の脈も切断されていく。土木が著しいという。一人前になるには経験も経 験を積むための機会も必要。若手の力不足が明らかとなる。老害への批判を 繰り返してきた若手が、重石が外れていざ責任者となると仕事が形にならな い。訓練されていなかった。こちらは若害だ。影響が見えにくいのでトップ がしっかりと世話しなければいけない。よく考えるべきは物事の道理。これ までの仕事のやり方でよいなら経験も貫禄も必要、老害より若害の影響が深 刻だ。仕事の仕方を変えるなら若手に伸び伸びやらせよ、お金も権限も付け て、また少し目も瞑って。その場しのぎのリストラとその結果としてのポリ シーのない若手の登用ほど会社を悪くするものはない。

 また現状維持でのリストラの影響は仕事の質の低下も招いている。人が1/3 になれば当然出来高は上がらない。仕事の内容を点検し、仕事そのものも リストラして始めて効果を得られるもの。バックログ(やり残しの仕事)が積 みあがっている会社も多い。以前なら怒る人、宥める人、誉める人、それぞれ に人がいて、人に関わり、会社へのロイヤリティと人材育成そして仕事の質が 担保された。今では一人でこなさねばならない戸惑いを地方ゼネコンの新任課 長が嘆いた。

 建設会社の事業に目を向けると粗利ベースで10%前後の低収益構造となっ ている。国家における建設の目的は権力維持の国土形成、社会基盤づくり。 重要課題ゆえ研究開発も人材育成も国家予算。手間仕事の建設会社に再投資の ための高収益は認めてもらえない。世も役割も変わり日本の建設会社の技術力 やノウハウは世界でも有数となったが変わらぬ収益構造。建設会社の研究開発 投資は蓄財から出す無税償却の範囲内がほとんどではないか。少々穿った見方 かもしれないが人材育成を含めて将来のための再投資に金が回り難いのは事実 である。もっとも建設会社の側にもそうした現状を変える視点が欠けている。

 リストラの結果、少なからず大手建設会社にいたベテランが地方ゼネコンへ 第二の活躍の場を移した。初めて知った世間の広さを異口同音に口にする。同 じ会社に居つづけたら感じ得なかったという、一皮もニ皮も剥けたという。エ ンジニアにしろ営業にしろ彼らの第二のステージはスペシャリストとしてのミッ ションだが、引き出しの多い分出てくるものは豊かだ。一方でどれだけ受け入 れた企業が彼らを活用できているのだろうか。

 即戦力の人財を柔軟に受け入れることでの企業活性化の方策も必要だが、組 織に居続けて人罪とならぬ組織文化や人事も、リストラの延長戦上で考えてい かなければならない。人財がいつまで居てくれるかも経営努力に依る。


2003年10月8日(水) 掲載
日刊建設工業新聞コラム「所論/諸論」より(1年間連載したものに一部加筆訂正)


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