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建設実務の視点

Aspect of construction businnes

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8.実行予算と原価管理

 建設会社における実行予算管理制度が工事原価の統制手段として定着して いるのはよく知られている。工事毎の原価を工事工種毎に予算化し管理する 方法だ。

 一般に建設会社における実行予算管理は経営管理の中核をなす制度であり、 実行予算を通じた個別工事毎の原価統制を基にしながら会社全体としての利 益管理を実現する、シンプルだが優れたシステムとなっている。個別工事毎 の直接的な工事原価に加え間接部門経費を共通経費として組み入れ、更には 工事金利を負担させることで、財務計算上の経常利益に見合う利益管理を、 実行予算を通して行ってしまう。つまり各工事が実行予算を堅守すれば企業 利益が約束される体系となっている訳だ。

 実行予算管理は優れた制度ではあるが、制度としての管理領域には限界が ある。また言うまでもなく制度ないし手法というのは明確な目的を持ってそ れを活用することが重要であり、ステレオタイプな導入は逆に労多くして利 の少ない結果を生んでしまうことになりかねない。そこでいろいろな会社の 制度を観てきてたいへん気になっている点を取り上げてみたい。厳しい建設 産業の現状の中、減少する工事量に対応してせめて厳しく原価管理を行い、 利益確保することは必至である。そのためにも自社の制度を点検し、より効 果あるものへと継続的な改善を図ることが大切だ。

 実行予算管理制度には大きく2つの課題があると考えている。ひとつは実 行予算管理イコール原価管理と捉えることである。2番目は実行予算管理に より現場の原価管理ばかりに目が行ってしまい会社トータルで原価統制を行 うという視点が失われているということだ。以上2点を個別に観ていくこと にする。

 建設会社の実行予算作成は元々発注者(官庁)による建設費用の見積から 始まったと言われている。現在も各社の提出する見積は実行予算に相似だ。 必要に応じていくつかの工種を作業ベースに組替えて実行予算書に書き直す。 いずれにしても単価と数量の組み合わせ。つまりあくまで予算なのだ。一般 に工事原価の統制は、「単価」については購買交渉、発注ロットの取り纏め、 仕入先の開拓及び絞り込み、代替材料等の検討等々、購買がターゲットとな る。「数量」は設計見直し(VE)、工法検討、段取り、生産性、物流等々、 技術や現場運営で取り組む。正に原価管理の主たる活動だ。こうした活動の 成果が、予算化した原価を保持、更に低減を図るといった予算実績として現 れてくるのである。このことはつまり予算統制は適切な原価管理を促すこと 或いは原価企画することであり、それ自体が原価の管理ではないということだ。 例えば「実行予算の作成を義務付け原価管理しているが一向に現場の利益改善 が進まない」「実行予算が意味をなさない」「月次単位の実績把握では原価 管理にならない」などとよく耳にするが、それは実行予算管理という予算管理 制度を導入しているがそれによる予算統制が機能していない、と言っているに 過ぎない。つまり原価管理そのものについては現場任せであり、コスト削減の ための現場支援や管理向上のための活動がなされていないのではないだろうか。 原価管理はそれ自体として経験の積み重ねや様々なアイデア、ノウハウ、管理 技術等の向上の結果であり、組織化や共有化により高めていくものだ。逆に 予算管理には予算管理のスキルがある。

 こうした誤解は特にコンピュータを用いて実行予算データを管理している場合 に陥りやすい。予算のデータ管理が中心となり(或いはそれが目的化してしまい)、 原価管理そのものへの取組みが疎かとなりがちだ。実行予算の管理と共に現場 支援の体制を整え、予算管理制度で得られるデータを活用し、有効に原価管理 が機能する全体像を捉えることが必要となる。実行予算管理制度には予算管理 と原価管理という大きく2つの機能と目的が含まれており、一般に情報システ ムとして組み込まれているのは予算管理としての機能である。原価管理の機能 は予算管理の機能と有機的に結びつくよう制度検討することが重要となる。

 実行予算管理制度は先に述べたように個々の工事の予算統制を通して会社全 体の利益を管理する体系を有している。このため実行予算管理により個別工事 の利益管理さえしっかりしていれば問題ないと考える傾向が強い。確かに唯一 収益の源泉は工事であることから言えば、そこを厳しく統制しておくことは当然だ。

 一方で、間接部門や期間経費はどうであろうか。多くの建設会社が現場への コストに対する視線に比較して本社や支店等の間接部門へ向ける視力は弱い。 会社全体のコスト構造が見えていない。一般管理費や貸借対照表にはなにやら 溜まっていやしないか。一般管理費予算のような単年度の予算統制手段の導入 はよく見かけるが、期間コストや資産負債を総合的に統制管理する制度の導入 は少ない。共通経費の配賦処理でさえ慣例でやっているだけで、本来の目的が 忘れられている。

 今建設会社に必要なコストダウン、原価管理は、現場だけではなく、会社トータル として取組むことにある。工事の実行予算を含めた会社全体に対するトータル なコスト管理制度を構築することが重要だ。言葉を変えればコスト統制を通じ たマネジメントの復権かもしれない。

 予算というのは実行予算であれ、会社のトータルな予算であれ、経営の目標の 上で配分や編成の方針が位置付けられている以上、経営目標そのものでなければ ならない。そうしたトップの意思を伝達するための制度を創ることが重要だ。


2003年11月10日(水) 掲載
日刊建設工業新聞コラム「所論/諸論」より(1年間連載したものに一部加筆訂正)


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