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建設実務の視点

Aspect of construction businnes

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9.淘汰進まぬ建設業界

 (財)建設経済研究所が発表した予測では、2004年度の名目建設投資は 52兆708億円(2003年6月)になるという。1997年から8年連続のマ イナス伸び率を記録することになる。50兆円前後の建設投資額は「建設冬の時代」 と言われた昭和50年代の水準となり、当時は建設業者数、建設就業者数それぞれ およそ51万業者、540万人の産業規模であった。2003年度の統計では建設 業者は55万業者、591万人の就業者数であるから、単純比較だが、4万業者、 51万人弱の供給過剰が読み取れる。また産業構造は大幅に異なり、当時は資本金 1千万未満の個人及び零細業者が90%近くを占めていたが、現在は58%弱まで に減っている。法人事業者の割合が増えていることから推察すれば、業者数の過剰 感は数字以上と考えられる。

 国土交通省は既に産業の再編淘汰へと政策の舵を切っており、確かにそれに呼応 するかのように建設会社の相次ぐ倒産や経営破たんが続いている。しかしながら破 たんした建設会社の更正や債権放棄は、逆に破綻企業の健全化が図られていること を意味する。民事再生中にも関わらず破たんへの危機が回避されたことで、競争力 を増して他社の脅威になっている建設会社の話も少なくない。縮小しているとは言 え更正会社も営業活動を継続しており、早期に倒産した建設会社は再生し市場へ復 帰してきている。是非の声があるのは事実だが、こうした状況も現実である。米国 の格付け会社は銀行から債権放棄を受けた日本企業の社債の格付けを高くする方針 と言う。ここ10年あまりで大手ゼネコンは平均して1.2%の対売上高販管費率 を改善してきている(建設経済研究所調査)。金融支援を受けている建設会社だけ の平均では2%を超える著しさだ。淘汰ではなく再生が進んでいる。

 また企業再編も政策的に進められているようだが、こちらも統合メリットの少な い産業特性からかなかなか進まないのが実体だ。破たんしたゼネコンを受け入れる メリットや目的が見えてこない。異業種転換や新規事業の促進に関しても支援策に よる行政の後押しは確かに力強い。公共工事の縮減、とりわけ土木工事の減少は厳 しい。土木技術者の過剰感はどの会社でも大きな課題となっており、建設従事者の 他産業への異動は待ったなしの状況だ。しかしながら建設技術者の職種転換の難し さが現実問題として横たわっていると聞く。

 新規事業についてもそう簡単ではなさそうだ。人材も資金も豊富な他産業の大企 業でさえ、様々な新規事業に取り組み、散々な結果となったことは知るところだ。 確かに建設会社は地域に精通し、市場特化型で推進できる強みがある。それでも様々 な面で大企業に勝るとは言えない建設会社が、新規性の高い事業へ軽々に取り組め るものだろうか。
 産業規模の縮小には業者数の縮小は必至にも関わらず、実際の成果は上がってい ない。それはつまり市場の競争相手として留まっていることに他ならない。皮肉に も競争は徒に激しくなる一方だ。

 更に、これまで比較的健全であった地場建設会社でも、破綻企業の返り血を浴び て傷つく例が増えてきている。こうした建設会社は安定的であった分改革意識が低 く、脇が甘い。右肩下がりの経営状況に「ゆで蛙」の例えではないが、健全と言わ れた企業であっても目が離せない状況になっていくことが懸念される。

 産業の淘汰再編も異業種への事業転換や新規事業の推進、これらを否定する理由 はなく、縮小を余儀なくされる建設産業には不可欠な取り組みであろう。但し、忘 れてはならないのは建設会社である限りは、建設市場において厳しい競争に勝ち抜 くための経営努力を継続的になさなければならないということだ。つまり建設会社 としての本業を深耕し競争力を高めることは当然であり、そこにも再構築の余地が 多く残されている。いや、公共投資に支えられ競争性の欠けた市場として営まれて きた業界で、個々の建設会社には未だ未着手の経営課題や成長への取り組みが多々 ある筈だ。カイゼン活動を不断に続けるトヨタ自動車の成長を自身の経営にしてい るだろうか。

 建設業へ留まるにしても異業種への事業転換にしても市場での厳しい競争が待っ ていることに変わりはない。


2003年12月11日(水) 掲載
日刊建設工業新聞コラム「所論/諸論」より(1年間連載したものに一部加筆訂正)


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