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建設実務の視点

Aspect of construction businnes

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10.地方における建設産業改革の視点

 国土交通省が建設産業の淘汰再編を全面に掲げたのを請け、各都道府県において も県内建設産業への産業政策を打ち出している。県としての建設産業ビジョンを示 したものから経営改革の取組みへの助成金を創設したもの迄、いずれも「技術と経 営に優れた建設会社」を残し、地域雇用を維持するために他分野へシフトさせよう とする点で共通だ。

 そんな中で山形県のホームページで掲載している県内建設業の振興を目指した 「建設産業懇話会」の報告が面白い。方向性を打ち出したのではなく、その検討の 経緯を報告書として公開している。官学民がメンバーとなって県内建設産業におけ る課題、建設業の業態転換のための進出先に挙げられている農業、福祉、環境の各 分野での事業課題と可能性について現実的で実務的な討議を行っている。当然のこ とだが地図の上で行き先を示されても、知人もさしたる情報もない見知らぬ場所へ 人は簡単に移り住めない。本来事業はそんなものではないし、裸一貫やってきた経 営者なら嫌というほど分かっている。経営改革は自己責任が原則だが、これまで基 幹的な役割を担い、恐らく大多数の都道府県において相当の規模を有する建設産業 の構造転換は、発注機関としてだけではなく地方行政としても自らの大きな課題で あることは疑いがない。横並びの指針やビジョンを示して良し、とは行かない筈だ。  現実問題として地域性も含め社会的な課題、法律や制度上の制約も出てくる。 そうしたことへ具体的に対応する環境整備や行政支援があって始めて産業転換のよ うな一大事業は方向付けられるものではないだろうか。

 同様に「技術と経営に優れた建設会社」と言う表現にも曖昧さを禁じえない。 現行制度の中で具体的に目指す「優れた技術と経営」の姿を見失っている建設会社 は多い。工事量と工事価格の縮減の中で、「価格」のみが基準となっているのが現 実だ。要求仕様が同じ中でどの様に技術と経営の優秀性を発揮すればよいのか。そ うした面からも技術や品質を考慮する多様な入札制度の導入は急がれる大きなテー マだが、まだまだ環境が整っていないのも現実だ。

 また「技術と経営に優れた」とは、発注者としての業者管理の視点では淘汰再編 の中で残るべき企業の選別基準であり、個別の発注では正に発注条件。いずれもそ れぞれの面からの明確で具体的な要件提示がなされるべきであり、それを示すこと が供給サイドである建設会社の目指すべき経営努力の方向に繋がるものとなろうし、 市場形成の競争要件ともなる。もともと入札制度は選別方法であってQCDS (品質・コスト・工期・安全)を最低限担保する仕組みと併せて機能してきており、 技術や品質などに基づく優劣評価は行わないのが原則だ。‘クサビが外れれば’ 価格オンリーの非情な戦いとなるのは当然とも言える。

 「脱ダム宣言」で話題を呼んだ長野県知事は、地方の建設業界ではすこぶる評判 の悪い悪代官のように陰口を叩かれている。脱ダム宣言に代表される建設行政がド ラスティックだったこともあり業界の歴史や慣習を蔑ろにし、厳しい受注競争へ追 いやり淘汰しようと悪事をはたらいている姿に映る。一方でダムの目的を代替させ る環境に配慮した新たな利水治水手段を研究するなど、県として先進的な取組みを していることの評価は高い。国土計画に沿って単にダムづくりを進める事業者と、 ダムは否定したが‘ダムを必要とする目的には向かい合った’事業者との相違が見 えてくる。ダムを施工する高度ではあるが平準化された技術ではなく、地域特性や 自然環境へ配慮しつつ事業目的を実現するソフトやハードを組み合わせた代替技術 への取組みが今後は顧客ニーズになるだろう。まだ過渡期なのだろうが、こうした 地方の発注者ニーズが明確な競争要件として具体化され提示されていくことに期待 したい。地域が地域としての特性とまちづくりに向かい合えば金太郎飴の都市化政 策や横並びの土木建設事業から脱却していくのは当然ではないだろうか。例えば地 域要件をひとつ取っても単なる所在地の限定ではなく、地域の自然環境や風土、伝 統技術等々による条件が必要になってこよう。そうした発注者サイドのニーズが明 確な競争要件となって提示されることが、地場産業としての建設会社の「優れた技 術と経営」を導くことになるだろう。

 地域が地域としての存在意義を明確にし復活する過程に建設会社の新しい姿が隠 されている気がしてならない。地域の復活に不可欠な建設会社の姿にしていくこと が悪代官の企みであると思いたい。


2004年2月19日(木) 掲載
日刊建設工業新聞コラム「所論/諸論」より(1年間連載したものに一部加筆訂正)


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