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建設実務の視点

Aspect of construction businnes

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11.社長のリストラクチャリング

 リストラクチャリングはリストラの呼称で一般に広く知られている。マスメディ アや日常語としては人員削減の代名詞として使われるため、業績不振企業の「苦肉 の策」のような負のイメージが強い。しかしながら本来の意味は、不採算事業を整 理するようなマイナスな取組みを言うのではなく、成長性や強みのある事業へ集中 し、事業全体の最適化を図る手法を指している。

 人件費の削減が手っ取り早いコストダウンなのは誰でも知っている。年功序列と 終身雇用が象徴の日本的経営の崩壊と騒がれ、聖域に手を付けたことが大きく取り 上げられた時にはまだよかったが、こちらも日本的と言えるが一度やってしまうと 慣れっことなって常態化してしまう。日本的経営の看板を降ろす無念さのようなも のを最初はヒシヒシと感じたものだが、今では早期退職に逆に社員が群がる光景す らある。

 最適化を図るために事業を組み立て直すポジティブな活動がリストラクチャリン グである。その過程で優先度から判断した整理が行われる。一般に使われるリスト ラの略称は正に整理に伴う負の面のみを指し示していると言えるが、組み立て直す ことを重視しなければならない。つまりどう組み立て直すかが先になければ、「捨 てる」だけになってしまう。多くの日本の企業で行われたリストラは「捨てる」だ けのものであったと言われている。これを戦略なきリストラと言う。戦略には経営 の意思が必要だ。

   いかに組み立て直すかが追及すべきテーマであり、そのために取り組まなければ ならないのが社長のリストラクチャリングである。そう、経営者自身を組み立て直 すのだ。地場建設会社に多くみられるように建設業はオーナー経営が多く在籍期間 が長い。オーナー経営の良さは意思決定が早く、企業の方針や経営者のネットワー クが長期に継続するため、営業環境や従業員のマインドも安定しやすい。一方で、 制度疲労が生じやすく活性化しにくい。人事も滞留しがちであり若返りせずチャレ ンジ志向が失われていく。様々な改善への取り組みもしてきたのだろうが、一人の 人間である以上長きにわたりクセがでるのは致し方ない。今や待ったなしの業界状 況で、惰性の取組みは返って危機の増幅となろう。だからこそ、自身で「捨てる」 ことが必要だ。社長が経営そのものなのだ。社長の自己改革を欠いて何かが進むだ ろうか。

 ある地場ゼネコンの社長は、辞めて責任を取ることのできない重責を嘆いた。大 手企業のトップが自身の首を代償に事を収める慣例をなじったのだ。賛同する方も 多いのかもしれない。例えばこうした考えもリストラの対象となろう。つまり社長 が永遠の責任を取る会社の役職員が仕事への強い責任感を涵養するだろうか?また 永遠の社長を前に経営感覚を持った社員が存分に育つだろうか?自社に人材が満ち 足りたことがあっただろうか?

 もともと現場仕事は徒弟制。‘金’と‘施工’の分かる代理人が育てば御の字の 建設会社も多い。マネージャーらしい仕事をする人材は決して多くはないのが実情だ。

 「永遠の責任」という考えをリストラクチャリングのターゲットとすることは経 営責任への社長の強い意志を否定するものではない。社長への信頼感を生む素晴ら しい面も確かに多い。但し、逆から見た時に何が見えてくるのかが重要だ。そこに これからの厳しい経営環境を生き抜くための経営課題がないのかを追求する。要は 当たり前と考えていた事やその考えが浸透した会社の姿をリストラクチャリングの ターゲットとして捉えていくことで再構築の姿を描いていく。

 またこれまで経営の監視機能があっただろうか。監視機能がないと言うことは「暴 走」と同時に「何もしない」「効果のない」ことも制約されない、つまり取り組んだ 結果への評価もないと言うことだ。一般には監視機能の不在は甘えを生み、成長や改 革の阻害要因となる。社長のリストラクチャリングは「自省」による監視機能とも言 える。場合によっては本当に自らの勇退を決断することになるかもしれない。しかし そうした厳しさを通じて得られる明確な問題提起が再構築を実現していくには不可欠 となるだろう。

 未だ続く厳しい建設業界にあって、リストラクチャリングを単なる「切り捨て」の 活動であるリストラに終わらせず、またリストラクチャリングが本来の成果を出すた めにも、経営者自らがまず自身の経営に対して厳しいリストラクチャリングを施し、 再構築の姿を描くことが求められる。

 ひとつひとつの仕事の課題への答えは経営の中にあり、そして経営の問題への答え は社長の中にある。課題はいつでも一つ上の次元の中に答えがあるものだ。


2004年3月3日(水) 掲載
日刊建設工業新聞コラム「所論/諸論」より(1年間連載したものに一部加筆訂正)


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