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建設実務の視点

Aspect of construction businnes

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12.新たな建設産業への視点

 報道によると価格協議方式の導入が国土交通省所管の公団等で増えていると言う。 年々減り続ける公共建設投資は、事業費の縮減に始まり事業自体の選別、更にもう 一歩進んで個々の事業発注時点つまり購買段階でのコストダウンへと民間企業並の 手法導入を模索しつつあるようだ。建設市場を形成する主要なバイヤーが、ビジネ スライクなスタンスを取ることは競争市場の健全化と活性化には不可欠なことだ。 今のところ官庁が直接行うには会計法の制約があるようだが、非常に大きな転換点 となるものと考えられる。

 一般に購買段階におけるコストダウンでは、品質や量とのトレードオフの関係を 如何に最小化するかがネゴシエーションのポイントとなる。単純な‘価格たたき’ ではなく良質なものを適正価格で購入するためには、これまでの入札制度では不問 であった技術や品質の優劣が課題とならざるをえない。そのためには技術や品質を 担保する客観的で公平な制度づくりが必要となり、発注者による明確な技術及び品 質要件の提示とそれらに基づく建設会社の選別という競争市場らしい姿が見えてく る。そして、そうした競争市場を支える各種の制度においても整備が必要となろう。 例えば中小から大手まで約20万弱の建設会社が一律の評価基準で計られる経営事 項審査は、決して技術や品質の面から建設会社を格付けするものとはなっていない。 従来の公共事業の確実性を担保するには適していても価格協議方式に相応しい制度 とは言い難い。新しい試みが成果を出すためには、常に目的に対応した手段へと制 度の改革を伴うことが不可欠だ。

 思えば公共工事の電子入札に違和感を覚える人は少なくないのではないか。仕様 があるとは言え何十億もの工事を交渉もなくクリックひとつ、価格のみで決まって しまうビジネスプロセスは、民間企業では見当たらない。手間ヒマ掛ける必要ある ものには充分なプロセスを踏むことが求められる。こうした面からも一律を脱し目 的に合致した入札プロセスを検討することも必要だ。電子的なプロトコル(規約、 手順)ばかりではなく、事業に適したビジネスプロトコルが追求されなければなら ない。箱造りは進んでも入れる中身が追いついていない。

 技術や品質の優劣評価には常に大手建設会社への偏りへの不安が付いて回る。建 設技術の平準化は公共工事には必須要件だが、現実には大手と中小の技術格差は大 きい。一律の技術評価にあっては当然中小建設会社に歩はない。但し、必要とされ る技術や品質の明示に加え、地域要件が加味されれば中小建設会社の存在意義は生 れてこよう。そこに求められるのは、大都市圏からの所得の再配分としての公共事 業が立ち行かなくなり、全国一律の都市化政策から地域の特色あるまちづくりへと 軸足が移るときの問題解決を担う姿だ。地域の伝統、文化、風土、自然に基づく地 域要件は、所得の流出を防ぐ‘紐付き’とは違い、地域のまちづくりにおいては要 求性能、要求品質として求められて然るべきものとなろう。また高度な建設技術の 開発ではなく、伝統技術の発展改良や地域特有の素材を用いたニッチな資材の開発 などでは中小建設会社に強みが出てくる筈だ。まずは地域が明確なニーズを掲げる ことから始まる。そのために汗をかく発注者責任もある。

 産業政策の基本原則は、市場に任せ、市場原理が働かないところを補完すること にある。企業の自主性が基本だ。但し、建設産業は市場の大口顧客が公官庁であり、 バイサイドと政策サイドの両面を合わせ持つ。それは豊富な国家建設を滞りなく確 実に実行するシステムの構築には優れて効果的に機能してきたと言える。事業量が 減り、公共事業の役割や内容も変わりつつある中、次はこれまでのシステムを造っ たバイサイド自らによる創造的破壊が、新しいイノベーションのプライオリティと なろう。

 広い意味でのこれまでの産業政策の大きな目的と成果は、雇用調整局面において 失業を極小化してきたことにあったのかもしれない。景気対策の名の下の公共事業 もその役割に多大な貢献を誇った。しかしもう地方への所得配分も潜在失業者の企 業内留保も立ち行かなくなってしまった。それでは、と産業転換へと舵を切っても、 もともと高齢化産業、他分野へ転出する気力も体力も疑わしい。彼方の分野も豊饒 の地か?それよりも経験やノウハウを新しい知識や技術の創造へと役立つ知識労働 への転換の方が現実的ではないか。先人の知恵が生きやすいのも建設産業の特徴だ。 そのためにも従来型の産業システムや画一的な事業から脱皮し、企業のイノベーション を促進する競争市場の確立が先決と思える。


2004年4月5日(月) 掲載
日刊建設工業新聞コラム「所論/諸論」より(1年間連載したものに一部加筆訂正)


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